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コラム

第3回 肝斑治療の難しさ

 

この疾患は、20-40歳代の女性の顔面、主に両頬に対称性で境界明瞭なモノトーンの茶褐色斑が出現し、通常、先行する炎症症状や自覚症状がない。紫外線に曝されると増悪するため、日焼けと思って長らく放置していて、日焼けがなかなか取れないとのことで来院される女性も意外と多い。
両上下眼瞼に症状は出現しないので、典型例では一見茶褐色の下半分パンダ様に見えることが多い。

しかし、初期症状の時には茶褐色斑がごくわずかにしか認められないことも多いため、診断に苦慮することも少なからずある。このような部分症状しか示さない場合に、安易にレーザー治療をすると色素斑がさらに濃くなり、悪化してしまう。
恥ずかしながら、小生自身も勤務医時代に非対称性に見えた茶褐色斑に対して1例レーザー治療をしてご本人に迷惑をかけたことがある。誠心誠意の1年がかりの治療で何とか元の状態に復旧したが、整容的な不都合を長期間させてしまったことを深く反省している。ご本人も不平不満を言わずに治療に協力していただき、最終的には治療も奏効して事無きを得た。その後開業してからも、他医でのレーザー治療で肝斑の悪化した患者さんが来院され、当院で根気強く治療をすることにより徐々に改善し、最終的には治療に反応して好結果を残している。つまり、レーザー治療をして悪化しても、1-2年治療がかかるかもしれないが、徐々に改善してくるので安心して欲しい。
上記のような臨床経験から、小生は肝斑の可能性も否定できないシミの症例には、病変部のごく一部にテスト照射を行って、増悪の無いことを確認してから(即ち、肝斑を否定してから)病変全体に治療を行うことにしている。
患者さんの立場から考えれば一刻も早く治して貰いたいと思うのが道理だが、ここで病変全面にレーザー治療をしてしまうと、肝斑だった場合に患者さんのダウンタイムは途方もなく大きくなってしまうので、上記のようになる可能性があることを説明して、ごく一部にテスト照射するわけである。万が一、肝斑であれば最悪の事態を回避できるからである。

さて、肝斑で一番の問題は、治療を中止すると再燃しやすい点である。
治療中は徐々に改善してくるため、患者さんも治療に積極的になるが、治療期間が長引いてくると人間であれば誰でも(サンスクリーンをせずに紫外線を浴びながらのスポーツなど)手抜きをしたり、治療を中断して諦めてしまうこともある。

そのため、少しでも早く肝斑の色調を薄めるべく、ケミカルピーリングとビタミンC(最近ではトラネキサム酸も併用することもある)のイオン導入の施術を定期的に繰り返し、美白剤(ハイドロキノンとトレチノイン)を併用する。並行してトラネキサム酸とビタミンC内服も行う。この治療で軽快してくることが多いのだが、個人差があるため、一様に改善するわけではない。また、症状が軽快した後の維持療法には、患者さんの負担が少なく、継続して出来る簡便な治療を選択しなければならないので、個別によく相談して決めなければならない。

最後に、妊娠、経口避妊薬、抗痙攣薬、内分泌異常、肝機能障害、遺伝因子、化粧品などの因子も関与していると考えられているので、問診の時には煩わしいと思わず、上記の因子(特に内服薬など)の有無を是非教えていただきたい。

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